ガーデニングの不思議

昨年の二月に植木屋のSさんにヤマボウシをはじめとした草木を植え付けてもらって
から一年が過ぎ、我が家の小さな庭も四季がひととおりめぐったことになる。
ガーデニング それにしても、ガーデニングというのは恐ろしい。
それは庭という小宇宙を作り上げるある種の創造行為なのだ。
「くそー枯れちまった」とか「うぎゃー、イメージと違う~」といった予測できない事態が次々と起こり、自分の理想郷の完成を夢見て日夜ガーデナーは庭をいぢり続けるのである。

ところで、植物を植えるのに最適な土とはどんな土なのだろう。
園芸書を見ると99.9%の確率で次のように書かれている。
「水はけがよく、保水性のよい土に植えましょう」。
なんじゃこりゃ?である。
人間で言えば「冷淡だが情に厚い」というわけのわからん性格である。
「保水性のいい土に植えましょう」とか「水はけのよい土に植えましょう」ならわかる。ところが、「水はけがよくって、でもしっとりなの」と相反することが書かれているのだ。まるで禅問答のようではないか。

もしあなたが、非常に細かい性格ならこの段階でつまづくであろう(ほんまか?)。
こんな時は、「なに言ってるのかわからんけど、ホームセンターで売ってるプランターの土でええわ」と軽く考えておくのがよろしい。それでも十分育ってるし。

我が家の庭は、家の東側にあるので午前中しか日があたらないシェードガーデンである。だから半日陰を好む植物を植えることが多いのだけど、そういった植物に適した植え場所として園芸書にはこう書いてある。

「秋から春には日があたり夏場は日陰となる落葉樹の下に植えましょう」。
最近の住宅事情から小さな庭でガーデニングしている人も多いはず。
小さな庭にそんな都合よく落葉樹があるわけないのである。
もしあなたが、小さなことにこだわる性格なら、またまたつまづくであろう。
クリスマスローズを植えるためにでっかいカキの木を植えちゃうかもしれんのだ。
こんな時は、「ちょっと日陰ぎみだったらいいんでしょ。あらよ」と植えてしまいましょう。

「うちの庭は日当たりがよくて日陰ぎみの場所なんてないわ」という羨ましい庭をお持ちのあなたには、「日当たりを好むものを植えなさい」といいたい。
よくホームセンターなどで苗を見ていて気に入ったものが見つかってもそのラベルには「日当たりを好む」なんて書かれてて、そのたびに「チッ、おまえも日当たりか」と心で舌打ちをするのであった。

あと、悩んでしまうのが「日当たりを好みますが、夏場は半日陰となるところに置いてください」である。いったいどっちやねんといいたい。

我が家にはジューンベリーという実のなる木がある。
去年はジャムにして食べた。うまかった。
今年はさらに沢山実をつけさせようと肥料のやり方について調べてみた。
「木の根もとでなく枝先あたりの土を掘って肥料をやりましょう」とあった。
というのも、木の根っこは地面の中で伸びてちょうど枝先あたりに養分を吸収できる根があるから、ということらしいのだ。

なるほどと、庭に出てみれば。
枝先は幹から70cmほど離れてる、ということはこのあたりか。
と幹を中心とした半径70cmの円を花壇の地面に想像する。
ナハハ。
そこには、シャクナゲやヒュウガミズキ、ギボウシなんかが植わっている。
そもそも狭い庭なんだからちょっとでも空いたスペースをガーデナーは、見逃すわけがないのだ。
しかも、反対側の枝先は道路に飛び出ている。アスファルトをカチ割れというのか。

まったく、もう少し実践的なノウハウを書いてもらいたい。
もしあなたが、かなり真面目な性格なら、またもやつまづくであろう。
こんな時は、マグアンプKの小粒でも撒いとくしかあるまい。
それでは、ありがたみがたらんと思ったら。
相撲の力士のごとく、うりゃと気合を入れて撒けばよいだろう。
ただし、間違っても塩を撒かないようにしてもらいたい。

というわけでガーデニング・ノウハウは人それぞれで微妙に違っていて、地域、環境にも大きく左右されるのである。
ちなみに「日当たりを好む」と書いてあっても意外と半日陰で育つこともある。
そんなファジーなところもガーデニングの醍醐味かもしれない。

ガーデナーは、小さなことにはこだわらない大胆さと、土の中に潜むヨトウムシも見逃さずに捕獲する注意深さが必要である。

そして、夏の終わりにはもう来年の春のことを考えるせっかちな性格と何年後に花が咲くともわからないサボテンを育てる気の長さを持ち合わせていなければならないのだ。

磁気の月6日(白い月の魔法使い)